JALの最高責任者であった稲盛和夫氏(現・名誉会長)は、地裁で「解雇の必要性はなかった」と証言した。この証言は重要なものであった。経営再建に乗り出した当事者が、165人の解雇について必要なかった、と語ったからである。
実際、解雇後のJALの経営状況は、同氏の証言どおり経営的には立ち直ったばかりか、株式の再上場を果たした。結果、同氏の出身である京セラは40億円を超える大儲けを手にした。濡れ手にアワの典型である。
高裁では希望退職募集の期限であった2011年3月に至る前の、10年12月末に解雇通告されたことが一つの争点になった。通常であれば、希望退職時期がきてその時点で数が足りないことが判明して、「解雇」という手段に移るものである。しかし、3ヵ月も前倒しして解雇した。何故か。理由は高裁の場で解明された。3月末になれば希望退職者は予定に達する(予定を上回る)ことが分かり、それでは解雇〝理由〟がなくなるため3ヵ月も前倒ししたのである。
被解雇者はかつて労働組合の役員をやったことがあるなど、いわゆる活動家がほとんどである。何故なのか。これもまた高裁であますところなく立証された。背景に不当労働行為が潜んでいたのである。小説「沈まぬ太陽」を引用するまでもなく、この会社の経営陣はたたかう労働組合を嫌ってきた。いや毛嫌いしたといっても過言ではない。
今回の解雇事件の背景にもそれがあった。組合活動家を会社から追い出す、解雇の目的はそこにあったのである。それにオブラートをかぶせるかのように、病気欠勤者も切り捨てたのである。これはもう、誤解を恐れずに言えば、犯罪である。未必の故意である。
一審で原告は「解雇4要件」に違反することを主たる主張にした。東京地裁は解雇4要件についてはこれを維持するとしながら、JALの不当解雇を容認した。そのこと自体が論理矛盾であり、稲盛証人の「解雇は必要なかった」という発言については『心情を吐露したにすぎない』と擁護した。この判決についてパイロット原告団長の山口宏弥さんは「裁判所は腐っている」と批判した。私も同感である。
高裁判決の詳細は読んでいないが、弁護団の声明などを読むかぎり高裁判決は不当労働行為性について触れていないようだ。この問題に言及すれば、JAL経営に不当労働行為があったことを認めざるをえず、一審判決をひっくりかえす必要が生まれるからだ。やはり裁判所は腐っている。
たたかいは最高裁の場に移る。最高裁も地裁、高裁と同様に「腐ったまま」状態で〝脳死判決〟を出すのか、しっかり監視したい。
★脈絡のないきょうの一行
庶民には増税、企業には減税方針。安倍内閣の暴走はそろそろ止めなければ。