ところが、遺族年金の場合は妻が死亡しても夫は受け取れないという〝差別〟が残っています。この問題について、大阪地裁で「違憲」判決が出されました。これは画期的と言え、男女平等の精神からみても当然だと思います。この問題、私が言い続けてきた一つで、少し溜飲が下がりましたが、以下、朝日新聞ウェブから。
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地方公務員の遺族補償年金受給、男女差は違憲 大阪地裁
朝日新聞デジタル 11月25日(月)15時7分配信
夫を亡くした妻に手厚い地方公務員災害補償法(地公災法)の規定は、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとして、自殺した女性教諭の夫(66)が、この規定に基づき遺族補償年金を不支給とした地方公務員災害補償基金の決定取り消しを求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁であった。中垣内(なかがいと)健治裁判長は「男女で受給資格を分けることは合理的な根拠がない」として、規定を違憲と判断。同基金の決定を取り消した。
原告側によると、遺族補償年金の受給資格をめぐり、男女格差を違憲とした司法判断は初めて。同様の男女格差は、国家公務員災害補償法や民間を対象とした労働者災害補償保険法にも規定されており、今後議論となりそうだ。
判決は、地公災法が遺族補償年金の支給条件を男女で区別していることについて、「正社員の夫と専業主婦が一般的な家庭モデルであった制定当時は、合理性があった」と指摘。だが一方で、女性の社会進出による共働き世帯の一般化や男性の非正規雇用の増加という社会情勢の変化を踏まえ、「配偶者の性別により、受給権の有無が異なるような取り扱いは、差別的で違憲」と結論付けた。
訴状などによると、女性教諭は勤務先の中学校での校内暴力などで1997年にうつ病を発症し、夫が51歳だった98年に自殺。2010年に労災にあたる「公務災害」と認められ、夫は遺族補償年金の支給を求めた。しかし基金は11年、支給対象は夫を亡くした妻か、妻の死亡時に55歳以上の夫とする地公災法の規定を理由に不支給とした。
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この判決、実に合理的だと思います。たとえば、夫が病弱で仕事ができず、妻の収入で生活してきた人にとって妻の死は、自分の生活が成り立たないことに直結します。そういう夫に遺族年金の支給を行うことは、至極当然のことです。妻を亡くした夫に一定の収入がある場合は、遺族年金の規定どおりに減額措置を取ればいいことであって、まったくゼロという措置は不平等です。
この国は真の意味で男女平等になっていません。こういう部分の是正を積み重ねていくことによってこそ、平等はかたちづくられていくものだと思います。その意味からもこの判決、私は応援したい。
★脈絡のないきょうの一行
秘密保護法案、衆院を通過。数の暴力による強行採決に抗議。参院のたたかいに全力あげたい。

リフト頂上駅を後にして山頂をめざします。今回は4号路を使うことにしました。ここは以前、下りに利用したことはありますが登りは初めてです。このコース、歩く人はほとんどおらず静かです。途中、「みやま橋」という吊り橋があり最初の時、こんなところにと驚いたものですが風情があります。
4号路は、高尾山北側のバス停「小仏」のほうから登ってくる「いろはの森コース」と合流します。その分岐から私は、いろはの森コースを歩くことにしました。最後の階段を詰め切れば1号路とぶつかり、大勢の人に交じって歩くことになります。山頂直前のトイレで用を済ませ、いざ山頂へ。
前回の写真で紹介しましたが、ここも人だらけでした。富士山のビューポイントでは実にいい富士山を見ることができます。たくさんの人が集まるのは当然でしょう。身近に富士山を見ることができるのは、なんだか嬉しい気分になります。富士山の写真の左、ピラミダルな山は御正体山(みしょうたいさん・1,682M)で、日本200名山の一つです。高尾山頂からの富士山をぜひ見てください、気分爽快になること請け合いです。

高尾山頂から国道20号線(甲州街道)の大垂水峠にいったん下り、大洞山に登り返すことになります。そのコース取りのために、小仏峠に向かう「一丁平」まで進むことにしました。通常は「モミジ台」を通るのですが、今回はまだ歩いたことのないまき道を選びました。
あとで気づいたのですが、紅葉を見るためにモミジ台を歩いたほうが良かったのかもしれません。1時間足らずで一丁平に着きました。ここもハイカーが思い思いに休んでいました。その一角で私も休憩して、一息ついたら前進です。
ここからはメーンのコースから外れるため、静かな山歩きとなりました。大垂水峠までにすれ違ったのは一人だけ。大垂水峠からは登り返しです。4人の若者グループが追い越していきました。私はのんびり後からついていきます。稜線らしきところに出ると、写真のような道標が出現しました。

とりあえずの目標まであとわずかです。大洞山で一休みし、次なるコンピラ山をめざします。手前まで行くとまき道が出現、どうするか考えたのですが登りを取ることにして前進です。コンピラ山の山頂と思われるところには、三角点はあるものの山頂を示す標柱などはありませんでした。山に登ると、こういうことはままあるものです。
その山頂を下って間もなくすると、中沢山と甲州街道のほうへの分岐点に着きました。時間の関係もあり、中沢山は次回に残しておくことにして、下山です。甲州街道に着く手前で民家が見え始めました。すると道端に鈴なりになった柿の木があり、それを取っているご夫婦がいました。
みごとなその柿を写真に収めさせてもらい、声をかけてみると「今年の出来は多い。放っておくと鳥などに食べられてしまう。この辺はイノシシも出てくるから危ない。この柿で干し柿をつくることにしている」などと説明してくれました。
その場を立ち去ろうとすると「この柿をもっていきますか」と声をかけてくれました。断る理由はありませんので、ビニール袋にそれをいただいてザックに詰め込み、今年5回目の高尾山歩きに終止符を打ちました。いただいたその柿は19個あり、私の家の軒下にぶら下がっています。この冬の楽しみが一つ増えました。

★脈絡のないきょうの一行
秘密保護法案についての福島の地方公聴会、全員が「反対」。それでも自・公は強行するのか。

同じ山になぜ5回も、か--。高尾山にはたくさんのコースがありますが、それをすべて踏破したいと考えたからです。山頂へはケーブルカーとリフトの2種類の乗り物がありますが、これを使ったとしても終点から徒歩1時間は覚悟しなければなりません。一番オーソドックスなコースは、「稲荷山コース」でケーブル―乗り場のすぐ横から取り付けます。ここから山頂までは、ゆっくり歩いて2時間程度です。
このコース以外に、1号路から6号路までの道があります。これにはそれぞれ「高尾山の自然コース」「森と動物コース」「人と自然コース」などの名前がついています。もちろんこれら以外にも道はあり、飽きることはありません。そのすべての道を歩こうという試みです。
今回のメーンは、高尾山の南側を走る国道20号線の向こう側の山域です。ここには大洞山、コンピラ山、中沢山、泰光寺山などが連なっています。反対の「北高尾」と呼ばれる中央高速道をはさんだ北側の北高尾山稜はすでに歩いており、南側は初めてです。
時間稼ぎのために、ケーブルカーを使おうと思ったのですが長蛇の列。そこでリフトに乗ることにして乗り場に急ぎます。乗り場の直前に、赤と黄色の彩に目を奪われました。京王線「高尾山口」駅周辺には「もみじまつり」の幟(のぼり)がはためいていましたが、それを実感させてくれました。

久しぶりにリフトを使いましたが、乗り方がちと難しい。高齢者はケーブルカーのほうがおすすめです。リフトはゆっくりと動きますが、足元がブラブラしているのはどうも落ち着きません。それでも時折見せてくれる紅葉にほっとします。

リフト山頂駅に到着しました。周辺には人だかりができていました。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
徳洲会から、東京都猪瀬知事5000万円を借金。1年近くも経って返済というのは解せない。徳洲会の選挙違反がなければ、フトコロに入れたのでは?
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社説:秘密保護法案を問う 与党・みんな合意
毎日新聞 2013年11月20日 02時32分
◇まるで修正に値しない
特定秘密保護法案について、与党の自民、公明両党とみんなの党が、修正で合意した。首相が特定秘密の指定、解除などの基準を作成して閣議決定し、「行政機関の長」に秘密の指定について指揮監督したり、必要に応じて資料の提出を求めたりする権限を持つという内容だ。第三者的な観点から首相のチェックを働かすと、みんなの党は説明する。
だが、条文上、「政府」となっている基準を決める主体を「首相」に変えるに過ぎない。そもそも政府のトップである首相が第三者であるはずもない。修正の名に値しない。
国会での議論は不十分だ。採決を急ぐべきではない。
首相が膨大な量の特定秘密を個々にチェックするのは現実には不可能だ。修正案によっても、行政側の裁量で秘密指定が行われる根幹は変わらない。首相が「行政機関の長」を指揮監督するのは当たり前で、条文に明記するまでもない。
また、秘密指定の実施状況について、政府が毎年、国会へ報告し公表する規定も条文に盛り込むという。だが、個々の秘密指定の中身を国会がチェックできる仕組みではない。行政監視という国会の役割を担保する内容とはほど遠い。
国会審議で指摘された問題点に応える内容になっておらず、法案の本質は何ら変わらない。
与党は、日本維新の会との協議で、秘密の指定を恣意(しい)的にさせないよう第三者機関の設置検討を法案の付則に盛り込む考え方も示した。だが、このこと自体、本気で設置を目指しているのか甚だ疑問だ。
一方、民主党は、特定秘密の範囲を外交や国際テロに限定し、さらに指定の是非をチェックする独立性の高い第三者機関の設置などを柱とする対案を衆院に提出した。
公文書管理法や情報公開法の改正も併せて行い、特定秘密は原則30年で公開とする。延長する場合は、第三者機関の承認を必要とする。また、秘密を漏らした公務員への罰則も、政府案の最高懲役10年から懲役5年に引き下げる。
現行法の枠内で一定の秘密保全がされている現状に照らせば、民主党案もさらに精査が必要だ。ただし、国民の知る権利を大きく侵害する恐れのある政府案に比べ、懸念材料が少ない内容に改善されているのは確かだ。
政府案の概要公表は9月になってからだ。民主党案の提出が遅いとの批判は当たらない。民主党案を吟味もせず、政府案を強引に採決することは許されない。
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日本維新の会も事実上、〝無条件賛成〟へ動いています。想定内とはいえ、これで自民、公明、みんな、維新――と足並みをそろえることになります。自民党の補完勢力としてここまで分かりやすく動くあの人たちに、一票を返してもらいたいものですね。
★脈絡のないきょうの一行
小笠原諸島海域で、直径200メートルの新しい島が出現。大地震発生に影響はないのか?
前出の軍機保護法も同じでした。同法は1941年(昭和16年)に改定されました。まさに戦争前夜です。そのときの国会の議論は興味深いものがあります。一般国民が軍事秘密を偶然知りえることもありうることについての質問に、「軍事上の秘密たることを知って故意にこれを探知し、または収集した者だけを罰する、故意犯だけを罰するという趣旨」(司法書記官・佐藤藤左)というふうに答えています。
さらに、付帯決議として「本法の運用にあたって、軍事上の秘密なることを知ってこれを侵害する者のみに適用すべし」と明記しています。この決議をもって全会一致で改正案を可決しています。もちろん、大政翼賛議会ですから全会一致は当然といえばそうですが、そのなかにあっても軍事秘密を偶然知りえた国民でも意図的に漏泄しない限り、罰することはないと規定したのです。
にもかかわらず、この法律は恣意的に運用されたのです。その典型が前出の北大生・宮澤弘幸さんの冤罪事件です。旅行好きだった宮澤さんは、樺太にも行っています。その際、海軍大泊の工事現場を見ています。このときの模様をレーン夫妻に語ったことも罪状の一つになっています。
判決文によれば、宮澤さんはこの工事に北大のあっせんで夏季労働実習に参加しています。現代風に言えばボランティアということになるでしょうか。そのときの写真が残っていますので、間違いはないでしょう。大学のあっせんで労働実習に行った学生を、軍機保護法違反容疑で逮捕したのです。もちろん容疑はこれだけではなく、前述しましたが釧路飛行場を見たことも入っています。誰もが知っている飛行場のことを語ったことが、法律違反に問われたのです。
これらの事実を付帯決議に照らし合わせれば宮澤さんが罪に問われる理由はないはずです。しかし、特高警察は強引(恣意的)に違法行為として、逮捕・起訴したのです。国旗国歌法と同じように、付帯決議が露ほどの役割を持たないことはこれでお分かりいただけると思います。
同様に、問題の秘密保護法案を修正しても基本的理念は変わらないのですからほとんど意味をなさないことは明らかです。みんなの党と維新の会は修正を求めることによって同法案を成立させようとしています。これはもう悪法成立の片棒担ぎにほかなりません。この法案は修正や付帯決議は意味をなさず、まるごと廃案しかないのです。
反対運動は広がっています。毎日新聞によると来週26日に衆議院で採決という気配ですが、あくまでも廃案を求めてたたかいを強めたいものです。歴史に禍根を残さないためにも。
★脈絡のないきょうの一行
秘密保護法案についてのNHKの報道、気になるなー。「修正」の動きを伝えるも、中身には一切触れていない。気になるなー。
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日本維新の会国会議員団の平沼赳夫代表、松野頼久幹事長ら幹部は16日、都内で国家機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案への対応を協議した。同党が求めている修正案を与党がすべて受け入れなければ賛成は困難だとの認識で一致した。
維新は与党との修正協議で(1)30年を超えた秘密は例外なく指定を解除(2)秘密を指定できる行政機関の長を限定(3)秘密の範囲を防衛分野などに限定――などを求めているが、与党から前向きな回答を得られていない。
松野氏は協議後、特定秘密の指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置に安倍晋三首相が一定の理解を示したことについて記者団に「若干評価はできるが、すべてクリアしたというわけではない」と語った。
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ここで報道している修正なるものを検討してみましょう。まず、「30年を超えた秘密は例外なく指定を解除する」という件。放射能の半減期間ではあるまいし、「秘密」自体が秘密なものをどうやって30年という区切りをつけるのでしょう。そもそも30年という規定に何の根拠もなく、実現性など望めません。
「秘密を指定できる行政機関の長を限定」という件も同じです。「範囲を防衛分野に限定」という項目とセットになっていると考えられますが、法案自体が〈1〉防衛〈2〉外交〈3〉スパイ防止〈4〉テロ対策――の4分野と定めている以上、「防衛に限定」そのものがないものねだりです。仮にこれが了承されたとしても、あらゆる問題を「防衛」にこじつけることは可能で、ほとんど無意味です。
「特定秘密の指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置」も笑ってしまいました。第三者機関が知るところとなった「秘密」事項はそのとたん、秘密ではなくなるからです。一見、第三者機関は公平のように見えますがその機関に「秘密事項」を関係省庁が提出するのでしょうか。疑問です。
百歩譲って、その第三者機関に就任するのは誰でしょうか。おそらく「有識者」という意見が出てくるでしょう。いや、もしかするとメディア関係者を採用するかもしれません。そうなれば、大量のメディア関係者を委員に登用することで、あの小選挙区制を導入した第8次選挙制度審議会のように、「批判」できない体制が作られてしまいます。つまり、メディアをも〝共犯者〟に巻き込む恐れは否定できません。
この秘密保護法案は修正や付帯決議などで、国民の知る権利や言論・表現の自由を守ることはできない本質を持っているのです。法律が成立してしまえば、国民や報道機関を拘束する〝道具〟として使われることは、先に引用した軍機保護法が如実に物語っています。この法案は丸ごと廃案しかないのです。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
F1(福島第一原発)4号機の核燃料棒取り外しが始まった。絶対に失敗が許されないこの作業、大丈夫か?
これが裁判になったらどうなるか、という問題が生じます。少なくない弁護士が指摘していますが、裁判になれば何が秘密だったのかということが暴露されるわけですから、その事項はその時点で秘密ではなくなることになります。それを防ぐ方法は一つしかありません。密室裁判がそれです。
国会の議論はまだそこまではいっていないようですが、秘密を守るためには、秘密の部屋で裁判をやらざるをえなくなることは容易に想像できます。そうなれば事件を担当した弁護士は秘密を知ることになり、秘密保護法による処罰の〝対象者〟になってしまいます。このように秘密事項が秘密であることによる弊害ははかりしれません。
さらに裁判官にも波及する恐れがあります。先月の中旬、秘密保護法反対の超党派議員の呼びかけで、この法案づくりに携わった関係省庁の担当者を招いて衆議院議員会館で討論会をやりました。そのとき、参加者から同様の趣旨で「裁判になったら秘密が表面化することになり、秘密ではなくなることになるがその関係はどうなるのか」という質問が出ました。担当者はなんと答えたと思いますか?
なんと無責任なことに「それは裁判官が判断することになります」と言い放ったのです。これはある意味重要な内容を含んでいます。実は、当の裁判官も裁判に付された「秘密事項」について知らないはずです。何が秘密なのか、どこが秘密なのかを知らない(知りようのない)裁判官はどうやって違法性を「判断」するのでしょうか。
そしてその秘密の内容を裁判で知った裁判官も、その秘密を洩らしたら罪に問われることになるでしょう。その場合の裁判は弾劾裁判しか考えられませんので、その弾劾裁判の裁判官(衆参両議院の議員によって構成)も「秘密事項」を知ることになります。その裁判を担当した国会議員が知りえた秘密を洩らしたら……。ドミノ方式で秘密保護法違反の被疑者は際限なく広がることになります。これはひどい。
いま国会ではこの秘密保護法案について、修正の動きがあります。次にこの問題について考えてみます。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
ILO、日本航空経営に「新規採用するなら(解雇された人たちの)職場復帰協議」を勧告。識見である。
軍機保護法第1条は「本法において軍事上の秘密と称するは、作戦、用兵、動員、出師(注・すいし/出兵。軍隊を繰り出すこと)その他軍事上の秘密を要する事項または図書物件をいう。前項の事項または図書物件の種類範囲は陸軍大臣または海軍大臣命令をもってこれを定める」としています。
冒頭から秘密保護法案と類似する表現が出てきました。秘密の種類や範囲の指定について軍機保護法は「陸軍大臣または海軍大臣命令をもって定める」とし、今回の秘密保護法案は「行政機関の長」と定めている点です。軍機保護法は少なくとも建前上、「軍事上の秘密」を扱うことにしていますが、秘密保護法案は何でもあり状態で、範囲に制限がなくそれを「長」が決めることにしています。その意味では法律を恣意的に使おうと思えば、秘密保護法案のほうが悪質です。
これは危ない。秘密の範囲や内容自体が「秘密」であるわけですから、後付(あとづけ)も可能になります。言い換えれば、気に入らない人物や新聞記者がいた場合、その人の言動や記事に「秘密であった」というレッテルを貼りさえすれば、罪に陥れることができることになります。これはもう恐怖政治の出現です。
前出の北大生・宮澤弘幸さんは、この手法で拘束されたのです。逮捕理由の一つに「旅行中に見た、釧路の海軍飛行場についてレーン夫妻に漏泄した」という部分があります。この飛行場は、秘密でもなんでもありませんでした。飛行家・リンドバーグ(1902年-1974年)が1931年8月に北太平洋航路の調査をしたとき、この根室飛行場に立ち寄りました。その際、日本の新聞は根室飛行場の様子を大々的に報じています。
宮澤さんが逮捕される10年以上も前に、根室飛行場はすでに公開されていたのです。にもかかわらず「秘密を外国に漏泄した」とでっち上げたのです。これはもう恣意以外のなにものでもありません。作られた冤罪です。スパイ防止法や秘密法はもともとそういう性質を持った法律と断言できます。
紙数の関係で多くの例示ができませんが、実に笑えない条項もあります。軍機保護法第5条は「偶然の原由により、軍事上の秘密を知得しまたは領有したる者、これを他人に漏泄したるときは6か月以上、10年以下の懲役に処す」と定めている部分です。
人は偶然に何らかの情報を得ることは多々あります。その中に秘密事項があったとして、それが秘密であることを知らずに他人にしゃべった場合でも処罰の対象にすると規定しているのです。問題は偶然に得たその情報が、秘密に属するものかどうかは一般国民に分かるはずもなく、軍機保護法はその判断を陸軍大臣と海軍大臣に委ねています。今回の秘密保護法案もまったく同じ考えに立脚しています。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
フィリピンの台風被害、時が経つにつれて大きく。略奪も起きているという。心配。
私自身、この会の役員の一人として宮澤弘幸(みやざわひろゆき)さんの冤罪の真相を広める運動をしていますが、このパンフをもとに、秘密保護法案と軍機保護法の類似点について検証してみます。なお、このパンフは、同「真相を広める会」の幹事の一人、大住広人さんが監修して作ったものです。
大住さんは毎日新聞社の元編集局次長で、現在では当たり前として使われている犯罪被疑者の呼称問題について整理した人です。(※注・被疑者呼称問題とは/かつて犯罪被疑者の報道はすべて呼び捨てだった。その典型がロッキード事件で逮捕された田中角栄首相。田中首相が現役で逮捕されたとき、新聞やテレビは「田中角栄 逮捕」と呼び捨てで報道した。しかし、被疑者にも人権がある、つまり無罪推定の原則からみて、呼び捨てはおかしい、という議論が起きて毎日新聞社がいち早く取り組み、当時、編集局次長だった大住広人氏がまとめたもの。以来、被疑者について他のメディアでも○○課長、元○○、○○被告、○○死刑囚などの呼称が使われるようになった)
検証の前に、北大生・宮澤弘幸冤罪事件とは何だったのか、から始めなければなりません。この事件はあの戦争が始まった日、1941年12月8日に起きました。当時、北海道帝国大学(現北海道大学)の学生だった宮澤弘幸さんが軍機保護法違反容疑で特高警察に逮捕されたのです。同時に、北大の英語教師として教鞭をとっていた米国人ハロルド・レーン、ポーリー・レーン夫妻も逮捕されました。その名前をとって「レーン・宮澤事件」とも表示されます。
宮澤弘幸さんは、旅行や山登りが好きな快活な青年で、クラスメートからも信頼を受けていました。その宮澤さんが旅行中に知りえた情報を、レーン夫妻に漏らしたというのが逮捕理由だったのです。
宮澤さんもレーン夫妻も容疑を否認しましたが、大審院(現在の最高裁)でも有罪が維持され懲役5年の刑が確定、宮澤さんは網走刑務所に送られ、戦後、釈放されましたが獄中生活で結核を患い、27歳の若さで亡くなっています。これは事実上の獄死です。
一方のレーン夫妻は、アメリカとの『捕虜交換船』で強制送還され、戦後、北大の招請で札幌に戻り教鞭をとりました。学生からも慕われ、夫妻ともに札幌で亡くなっています。結局レーン夫妻は、最後までこの事件について語ることはありませんでした。
この事件を掘り起こしたのは、80年代の国家秘密法阻止運動の先頭に立っていた故・上田誠吉弁護士でした。上田さんは「ある北大生の受難」と題して単行本を上梓、国家秘密法の危険性を訴えました。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
小泉純一郎、細川護熙の両首相経験者が「原発ゼロ」を提起。運動に弾みがつくことを期待したい。
翻って現在。
たたかう労働組合攻撃の一つは、昔国労、今国公労連と言えそうです。何が国公労連かといえば、公務員労働者の賃金切り下げがそれです。昨年4月から来年3月までの間、平均7.8%の賃下げが(現在進行中)行われています。本来、公務員の賃金は人事院が決めるものですが、「議員立法」として政府は賃下げを強行したのです。国公労連はこの問題について違憲訴訟をたたかっています。さらに今回の秘密保護法も、公務員の言動を縛るものにほかなりません。
もう一つは、日本航空の165名の整理解雇です。これこそたたかう労働者の狙い撃ち解雇でした。この解雇に抗して解雇された仲間たちは裁判に立ち上がりました。裁判所が自ら決めた「解雇4要件」に違背すると主張しました。しかし東京地裁は原告側の意見をことごとく排除し、会社の解雇を認めたのです。「経営が悪化したら解雇はやむを得ない」という問答無用の判決でした。
ところが日本航空は解雇後に700人を超える新規採用を行っているのです。新規採用するよりベテランのパイロットや客室乗務員を復帰させるほうが、よほど効率的です。しかし経営者はそれをせず、裁判所もそれを追認したのです。これはもう、国労つぶしの1047人解雇と同じ手法の、司法をも巻き込んだ国家的不当労働行為です。
労働者の雇用問題についても、80年代と同じようなことが行われ始めようとしています。「雇用特区」といわれる解雇自由法制定の動きがそれです。さすがに厚労省内部に反対意見が出て、今国会では見送られましたが「特区」という目新しい名前で労働者いじめが強まろうとしているのです。
そして、秘密保護法案。安倍首相の最大の目標が改憲であることは議論の余地のないところでしょう。80年代に中曽根内閣は国家秘密法を制定して、戦後政治の総決算の仕上げとしての「改憲」を企図しましたが、国民の反撃によって崩れました。その再来が安倍内閣による秘密保護法案である、と断言していいと思います。
つまり、秘密保護法によって国民とメディアの目、耳、口をふさぎ明文改憲の道を突き進もうとしているのです。見方を変えるならば、秘密保護法案は改憲の露払いの役割を担っているのです。そしてその行きつく先に、戦争できる国といういつか来た道が待っているのです。その筋道は、かつて中曽根内閣がつくったものでした。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
秘密保護法に反対59%(毎日新聞)。問題の本質が着実に広がっている。
法案は「特定」という冠がついています。そのことをもって「特定の秘密であればそれを保護する法律があってもいいではないか」という意見が出る可能性もありますので、ここでは敢えて「秘密保護法案」という表現をします。
この法案について自由法曹団がA4版で80ページを超える条条批判をしています。法案についてはこの自由法曹団のように多くのところで批判されていますので、私は角度を変えて考えてみたいと思います。まず、80年代の「国家秘密法案」が提出されたときの政治状況との類似点についてです。
1984年末から始まった102通常国会の所信表明演説で、中曽根首相は『戦後政治の総決算』路線を打ち出しました。中曽根首相は「私は、内閣総理大臣の重責を担って以来、戦後政治の総決算を標榜し、対外的には世界の平和と繁栄に積極的に貢献する国際国家日本の実現を、また、国内的には二十一世紀に向けた『たくましい文化と福祉の国』づくりを目指して、全力を傾けてまいりました。このような外交、内政の基本方針を堅持し、国民の皆様の幅広い支持のもとに、これをさらに定着させ、前進させることが、私の果たすべき責務であると考えます。」(ウィキペディア)と述べています。
具体的には、国鉄の分割・民営化、電電公社の民営化、専売公社の民営化、日本航空の完全民営化、労働者派遣法の制定――などでした。そのうえで提出してきたのが前述の「スパイ防止に係る国家秘密法案」(以下、「国家秘密法案」)だったのです。
数々の民営化方針がどうなったかは、説明不要でしょう。国鉄の分割・民営化は、国労つぶしに奔走し1047名の解雇を行い、非解雇者が塗炭の苦しみに陥ったのはご承知のとおりです。国労攻撃にあたって、当時の新聞は「カラスの鳴かない日はあっても、国労組合員のヤミ、ポカ報道のない日はない」と言われるほどひどいものでした。
JALの完全民営化もまた推して知るべし、です。小説「沈まぬ太陽」に象徴的に表れているように、経営陣は労働組合つぶしに明け暮れました。その延長線で経営破たんをきたしたうえ必要のない解雇を強行、組合の活動家165名を追い出しました。そのたたかいはまさにいま、火中にあります。
労働者派遣法はさらに悲惨な途を歩みました。指定業種は拡大され、日雇い派遣が横行し、挙句の果ては〝解雇自由法〟を作ろうとしています。非正規雇用労働者は全体の3分の1を超え、日本の労働市場は流動化ならぬ流血化しているといっても過言ではありません。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
犠牲者1万人超の報道もある、台風30号によるフィリピンの被害。今年の異常気象はやはり異常だ。
国家秘密法案について、当時の新聞各社は反対を表明。とりわけ新聞協会はこの法案に反対しました。その影響は民放連や書籍協会、雑誌協会などにも広がり言論・表現問題を扱う企業が足並みをそろえて反対しました。労働組合や民主団体だけでなく、市民レベルにも反対運動は広がり、同法案は葬り去られました。
ところが今回の秘密保護法案について、新聞協会は「国民の知る権利が損なわれる恐れがあり、その点に関して強い危惧を表明する」という意見書を発表するにとどまり、80年代の国家秘密法のときのような明確な『反対』という意思表示をしていません。その理由が分かったような気がします。
何故かというと、新聞協会のこの種の意見は、全会一致を基本としているからです。ある問題について加盟社の中で1社でも反対、あるいは保留の意見が出れば、「反対」という意思表示ができない仕組みになっているのです。一種の〝拒否権〟みたいなものでしょう。その背景を以下のウェブで垣間見ることができます。
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特定秘密は官房と4省庁限定…保護法案審議入り
読売新聞 11月8日(金)9時20分配信
安全保障の機密情報を外部に漏らした国家公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案が7日、衆院本会議で審議入りした。
政府・与党は今国会での成立を目指す。同法案には秘密指定の範囲が不明確という批判があるため、政府は特定秘密の指定対象を内閣官房と外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁の4省庁の情報に限る方針だ。
法案は、特定秘密の指定対象について〈1〉防衛〈2〉外交〈3〉スパイ防止〈4〉テロ対策――の4分野と定めている。
安倍首相は7日の衆院本会議で「外国との情報共有は、情報が各国で保全されることを前提に行われている」として、政府が設置を目指している国家安全保障会議(日本版NSC)が外国から有益な情報提供を受けるため、機密保全の強化が必要だと強調した。
国民の「知る権利」が制限されるとの懸念については、「秘密保護の必要性と政府が活動を国民に説明する責務とのバランスを考慮し、法律を適用していく」と述べた。
最終更新:11月8日(金)9時20分
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説明の必要はないでしょう。読売新聞の秘密保護法案に対するトーンがよく分かるからです。法案に「賛成」と言っていないだけまだましなのかもしれませんが、朝日、毎日、東京の各新聞と比較すると雲泥の差です。どうした読売新聞。
★脈絡のないきょうの一行
国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案は1週間足らずの議論で衆議院を通過。こんな重要法案について、これはあまりにも粗雑。
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2012年10月9日、通っていた中学校から帰宅するためスクールバスに乗っていたところを複数の男が銃撃。頭部と首に計2発の銃弾を受け、一緒にいた2人の女子生徒と共に負傷した。
この事件についてTTPが犯行を認める声明を出し、彼女が「親欧米派」であり、「若いが、パシュトゥーン族が住む地域で欧米の文化を推進していた」と批判、彼女に対するさらなる犯行を予告した。わずか15歳の少女に向けられたこの凶行に対し、パキスタン国内はもとより、潘基文・国際連合事務総長やアメリカのヒラリー・クリントン国務長官など世界各国からも非難の声が上がった。アンジェリーナ・ジョリーは事件を受け、パキスタン、アフガニスタンの少女のために5万ドル(約400万円)を寄付した。寄付金は、パキスタン、アフガニスタンにおける女性教育のために闘った女性、少女を表彰する賞の創設などに使われるという。
10月13日、容疑者とみられる5人が逮捕された。
彼女は首都イスラマバード近郊のラーワルピンディーにある軍の病院で治療を受け、10月14日には試験的に短時間だけ人工呼吸器を外すことに成功した。10月15日、さらなる治療と身の安全確保のため、イギリス・バーミンガムの病院へ移送された。翌16日には筆談で「ここはどこの国?」と質問し、19日には病院職員に支えられながらではあるが、事件後初めて立ち上がった。
銃弾は頭部から入り、あごと首の間あたりで止まっていて、外科手術により摘出されたものの、頭部に感染症の兆候があったが、奇跡的に回復し、2013年1月3日に約2カ月半ぶりに退院した。家族とともにイギリス国内の仮の住まいでリハビリをしながら通院を続け、2月2日に再手術を受けた。
2013年1月9日、シモーヌ・ド・ボーボワール賞(英語版)を受賞した。同年7月12日、国際連合本部で演説し、銃弾では自身の行動は止められないとして教育の重要性を訴えた。国連は、マララの誕生日である7月12日をマララ・デー(英語版)と名付けた。また、同年10月10日にはサハロフ賞を受賞した。
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これで概要はお分かりかと思いますが、自分たちの思想に反するからと10代の少女を襲うなど許されないことです。このような暴力が横行する限り、この国に平和は訪れないしアメリカからの攻撃の〝材料〟を与えることになってしまいます。
それにつけても一人の少女が、暴力にも負けずたたかう姿は立派としかいいようがありません。この少女にこそノーベル平和賞の価値があると思うのですが。
★脈絡のないきょうの一行
特定秘密保護法案が衆議院で審議入りするという。戦前の軍機保護法とオーバーラップするこの法案、成立させてはならない。
詳細は後述しますが、彼女は昨年10月に「パキスタン・ターリバーン運動」(TTP)に関与する武装勢力に襲われ、ひん死の重傷を負ったものの生還。その後、彼女と同様の主張をする女性活動家たちが相次いで殺害されているといいます。パキスタンで何が起きているのでしょうか。以下、時事通信のウェブから。
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過激派、女性活動家相次ぎ殺害=「マララさん同志」襲撃急増―パキスタン・アフガン
時事通信 11月4日(月)17時11分配信
女性が教育を受ける権利を訴えているパキスタンの少女活動家マララ・ユスフザイさん(16)がイスラム原理主義勢力に銃撃された事件の後も、同国や隣国アフガニスタンで過激派による女性活動家の殺害が相次いでいることが4日、分かった。日々の脅迫と戦いながら人権向上に取り組む両国の女性活動家2人が来日し、時事通信の取材に語った。
取材に応じたのはパキスタン北西部ペシャワルを拠点に、女性支援のための法整備に尽力しているルクシャンダ・ナズさん(47)と、暴力被害に遭った女性の保護施設をアフガンで初めて創設したマリー・アクラミさん(37)。両国では現在も、マララさんの「同志」とも呼べる女性活動家が襲撃され続けている。
ナズさんによると、今年3月に、貧困問題に取り組む著名な活動家レーマンさんが殺害されるなど、パキスタンでは過激派による女性活動家の暗殺事件が急増。昨年以降12人が凶弾に倒れた。
ナズさんは「殺人は多くの女性にとって真の脅威。女性の人権向上のために活動すると(それを快く思わない勢力によって)制限される。マララは運よく助かったが、死んでいる活動家がたくさんいる」と嘆いた。
保守的なイスラム教国である隣国アフガンでも暗殺事件は深刻だ。アムネスティ日本(東京)によれば、最近では昨年7月、12月に女性人権活動家が殺された。
マリー・アクラミさんは、暗殺事件以外にも「夫が妻の鼻を切り落としたり、駆け落ちした男女の首を家族が切断したりするケースなど、アフガンにおける暴力レベルは確実に悪化している」と説明する。
自身も言われなき嫌疑を掛けられ検察当局に拘束された過去があるというアクラミさん。「私も帰国したら殺害されるのではと考えることもある」と語るが、歩みを止める気持ちはない。「施設に入所した女性は人生を楽しんでいる。彼女たちを支援し続けたい」と意気込んだ。
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この動き、海の向こうの問題として軽視してはなりません。日本でも同様のことが起きる可能性があるからです。しかも、政府が法をタテに主導して。私の好きなアメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんはマララさんたちの活動を支援するため5万ドルの寄付をしたといいます。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
祝・楽天ゴールデンイーグルス日本一。復興への弾みになるといいね。