今回の増税案にも、あの人たちは『改革』という言葉を使っています。政治改革は小選挙区制の導入、教育改革は日の丸・君が代の押しつけ、行政改革は公務員削減と公務員いじめ――など、『改革』を冠した法案はすべからく悪法でした。
それを見事なまでに踏襲したのが、明日、衆議院で(強行)採決されようとしている「税と社会保障の一体改革」法案です。この法案、なんのことはない単なる消費税増税法案ではありませんか。それを敢えて「一体改革」などと名前をつけてすすめているところに、姑息さときな臭さを感じているのは私だけでしょうか。
いやいや、改革どころか増税にとどまらず社会保障を後退させる、改悪法案そのものです。
採決されようとしている法案の中身は、紙数がありませんので詳細は避けますが、民主党が主張していたものを換骨奪胎した、いや、かつて自民党が主張していたことそのものです。これはもうひどいとしか言いようがありません。それに公明党が乗っていることに悲劇が相乗されています。「是々非々」を旨とする公明党としては、決して珍しいことではないのでしょうが、「あなたたちは、誰の味方なのか」と問いたいものです。
法案の中身のひどさもさることながら、採決に至る経過に政権史上あり得なかったことが行われようとしていることに、別の意味からの危機感を私は感じています。一つは、民主、自民、公明という大政党が密室で談合を重ねて、修正案を作ったことです。これは、事実上の大連合です。法案成立には「何でもあり」の野田内閣の無節操ぶりは目に余ります。
さらに審議がほとんど行われていないという問題があります。3党談合による「修正案」は、原案と比べて50箇所以上の修正がされています。社会保障の後退部分が多く含まれていますが、きょうまでの間にわずか4時間しか審議していないといいます(しんぶん「赤旗」)。かりに1法案の審議に1時間(それでも少なすぎると思いますが)かかったとしても、50時間は必要なはずです。これはもう暴挙です。
メディアは、民主党の造反者が何人になるか、小沢派は新党を結成するのか、民主党執行部は造反組みにどういう対応をするのか――など一辺倒で、修正された法案の中身を報道していませんし、今の国会の運営の批判も見当たりません。
国民が目を塞がれた状態で増税が強行されようとしています。「これでいいのか」と警鐘を乱打したいものです。
★脈絡のないきょうの一行
民主党・輿石幹事長、「造反者処分先送り」へ(読売新聞ウェブ)。だったら採決するなよ。