アジア太平洋の概念は、南はオーストラリアから太平洋に隣接するいわゆる極東アジアとオセアニアのことをいいます。とすれば、太平洋の向こう側にあるアメリカよりもすぐ近くの中国や韓国、そしてタイやベトナムなど東アジア諸国に目を向けるべきではないでしょうか。ところが、アメリカを中心にしてアジア太平洋地域の繁栄を図るとしているのです。その部分をみてみましょう。
「私は、アジア太平洋地域の安定と繁栄を実現するため、日米同盟を基軸としつつ、幅広い国や地域が参加する枠組みも活用しながら、この地域の秩序とルールづくりに主体的な役割を果たしていくことがわが国の外交の基本であると考えます。」
と述べながら、「TPP協定への交渉参加に向けて協議を進める」と強調しています。これは少し言い方を変えてみると『アメリカを基軸にしたTPPに参加していく』ということにほかなりません。アメリカ追随そのものです。かつて、自民党政権時代でさえ、ここまで露骨な言い方はしていません。
もう一つ気になるのは、「この地域の秩序とルールづくりに主体的な役割を果たしていく」ことを強調していることです。このもの言いは、アジア太平洋地域の国々に対する不遜な態度といわざるをえないからです。主体的な役割を果たすことは否定しませんが、日米同盟強化を前提としていることは、危険そのものです。9条問題を含め、このもの言いにきな臭さを感じるのは私だけでしょうか。
演説は、むすびの最後に「政治を変えましょう。苦難を乗り越えようとする国民に力を与えこの国の未来を切り開くために、今こそ『大きな政治』を、『決断する政治』をともに成し遂げようではありませんか」と述べています。「国民に力を与え」という言い方は、典型的な上から目線ですが、野田さんのおっしゃるとおり、解散・総選挙で政治を変えるしか、この閉塞状況は打ち破れない、そんな気分がしています。
★脈絡のないきょうの一行
ノルウェーのストルテンベルグ首相がホロコースト関与を謝罪。歴史への真摯な対応に大きな拍手をおくりたい。
この演説の内容について、自民党が食い下がっている問題があります。野田さんが自民党の歴代首相の言葉を引用したことについてです。引用は福田さんと麻生さんの二人にわたっていますが、内容は与野党が協力しあって国政を動かしていこうと呼びかけている部分です。つまり野田さんは「先輩総理大臣もそう言っているのだから、自民党よ、君たちも協力せよ」といいたいのでしょう。
それを自民党は撤回せよと迫っているのですが、私には目くそと鼻くそが喧嘩しているようにしか聞こえません。つまるところ自民党も民主党も、同じ穴のムジナなのですから、そんなことはどうでもいいことなのではないでしょうか。もっと本筋である国民のくらしをどうするのかということについて議論してほしいものです。いや、もしかしたら両党はそれをやりたくないから、目くそ鼻くそ、のやり取りをしているのかもしれませんね。
この演説で、私が、おや? と思ったのは三つの優先課題の部分です。小ブログでも紹介しましたが、昨年12月時点で野田さんは①消費税②TPP③安全保障(普天間基地移転問題)――の3つについて「捨て石になってでもやり抜く」と発言し、その後「不退転の決意」で実行する、と、並々ならぬ気合いを入れていました。
ところが今度の演説では①大震災からの復旧・復興②原発事故との戦い③日本経済の再生――という三つに変わっています。1ヶ月足らずでこの変化は、昨年のものが批判されたことの反映かもしれませんが、「捨て石」という表現がいかに軽いものであったかを物語っています。もっとも、その捨て石とやらは〝軽石〟だったのかもしれませんが…。
この三つの優先課題とやらを仕分けしてみると、大震災からの復旧・復興は、まあいいでしょう。ところが「原発事故との戦い」は少し変です。なぜなら、野田さんはついこの前、同事故の収束宣言を出したばかりではありませんか。収束をしたモノと戦うことを宣言しているわけですが、矛盾も甚だしい。
「収束」というのは本来、除染などがすすみ人々が帰れる状態にもどったときに使うべき言葉です。それが、いわゆる冷温停止状態になったことを理由にして宣言を出したのです。これに対して、地元・福島県をはじめ多くの科学者が批判しましたが道理に叶っています。その結果、『原発事故との戦い』を言わざるをえなかったのかもしれませんね。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
年金支給額、4月から0.3%引き下げ。預金金利より高い率。生活直撃だ。
電力総連(連合系)が、民主党議員に「脱原発は困る」と陳情。こりゃもう、経営者だね。
2011/12/02
野党各党、一川保夫防衛相に対する問責決議案を参院に提出する方針。当然だね。
2011/12/06
野田首相、消費税10%の素案づくりを指示。対決軸が鮮明に。国民は負けない。
2011/12/07
昨日、JAL不当解雇撤回闘争支援集会に700人。理不尽を許さないたたかいの輪は広がる。
2011/12/08
「東電 実質国有化へ」(毎日新聞)――1兆円規模の税金をつぎ込むことが前提のようだが……。
2011/12/12
国会決議があっても辞任しない大臣。国会はやはり軽いモノなのですね。
2011/12/13
消費税増税に民主党内で反発(テレビ朝日系列)。次の選挙を考えれば当然の動きだ。
2011/12/14
読売巨人軍の〝提訴合戦〟が本格化。目くそ鼻くその類だが、根は深そう。
2011/12/19
おーい、福島第一原発事故の「収束宣言」大丈夫か? 地元の人たちは疑問視しているよ。
2011/12/26
指導者亡き北朝鮮の動き、少し気になる。目が離せない。
2011/12/27
東京電力第一原発事故調査委員会、中間報告で東電と国の原発管理を厳しく批判。当然。
2011/12/28
年越し派遣村は今年もないが、寒空に放り出された人たちが心配。温かい政治の力を今こそ。
2011/12/29
やはり新会派設立。鈴木宗男さんが出てくることは読まなかったなー。
2011/12/30
消費税増税を半年先延ばしで一致した民主党。なんのことはない、結局は増税じゃないか。
★脈絡のないきょうの一行
15年10月に消費税を10%にしても16.8兆円の赤字という試算。危機感を煽っても駄目なものは、ダメ!
10月30日に開かれた福島の「なくせ原発集会」に1万人が参加。いのちを守る運動は確実に前進。
2011/11/02
やらせメール解明ないまま、九電・玄海原発再稼動。無責任の極み。政府責任で止めるべき。
2011/11/04
国民投票を決めたギリシャに批判続出。中止勢力の巻き返しで、混迷が深化。どうするEU。
2011/11/07
「橋下(前大阪府知事)ファッショを許すな」の声、日増しに増大。芽のうちに摘むべし。
2011/11/09
オリンパスの不正経理、1000億円超に。背景に政治的な動きはないのか、解明が急がれる。
2011/11/11
野田首相、TPPの扱いに関する表明を先送り。熟慮か策略か。それでもなお「不参加」を求めたい。
2011/11/16
野田首相のTPP対応、内閣総辞職あるいは国会解散の始まりとみた。
2011/11/17
プロ野球日本シリーズ、中日とソフトバンクが2勝2敗のタイに。いい試合してるね。
2011/11/18
労働者派遣法の改正問題、逆流が始まった。これはTPPの雇用自由化と連動したものだ。
2011/11/21
「政策仕分け」が進んでいるが、政党助成金や思いやり予算こそ仕分けすべし。
2011/11/24
今度の日曜日27日、〝大阪秋の陣〟。『思い込み男』に城を明け渡してはならない。
2011/11/28
〝大阪都選挙〟の結果は極端な政治不信の表れ。同時に政党政治の危機。自民、民主両党の責任は重い。
2011/11/29
大阪ダブル選挙で陰に隠れた、東電の補償問題と原発事故の真相究明。放置は許されない。
2011/11/30
防衛省沖縄局長の暴言、更迭が早かったね。これが議員だと時間がかかるのにね。
★脈絡のないきょうの一行
放射性物質「汚染石」使用問題、いろはの「い」が行われなかったことが原因。行政の責任は重い。
大企業・製造業の景気短観は好転を示唆。ホントかなー。
2011/10/05
大阪府の橋下知事、大阪市長選に出馬だって。無責任もここまで行くと、凄味があるね。
2011/10/07
光より早いというニュートリノ。事実が検証されたらタイムマシンが理論的に可能。わくわくするなー。
2011/10/11
プロ野球セリーグの首位攻防が面白い。追い上げてきた方に利があるというが。さて。
2011/10/13
厚生年金支給開始年齢のさらなる引き伸ばし案。定年延長などのインフラ整備が先では?
2011/10/17
国会で選挙制度問題の議論開始。比例定数削減を許さず、民意反映の抜本改革こそが重要。
2011/10/19
公明党の歩み寄りでたばこ増税の動き。党略的なキナ臭さ、いや、たばこ臭さが漂う。
2011/10/20
臨時国会がきょう召集。大震災復興政策、TPP、選挙制度、普天間……目が離せないぞ。
2011/10/21
嘉手納爆音差し止め第三次訴訟に、空前の原告・22,058人。静かな空を返せ!
2011/10/24
人勧無視の政府・民主党。人事院の解体が目標だろうが、露骨にも程度があるぞ。
2011/10/25
都市対抗野球で、32年ぶり2人目の完全試合。JR東日本東北の森内寿春(もりうちとしはる)投手。すごいぞ!
2011/10/26
いよいよTPP剣ヶ峰。眠れる獅子・JA全中が反対運動に動き出す。さあどうする野田内閣。
2011/10/27
福島原発の廃炉に30年以上、と、内閣府原子力委員会。それでも原発維持なのかなー?
2011/10/28
深刻なタイの洪水。原因は熱帯雨林の伐採だという指摘。天にツバした人間への大自然の怒りだ。
2011/10/31
政府の介入で少しもどしたが、記録を更新しつづける円高。投機筋との戦いはまだつづく。
★脈絡のないきょうの一行
東京は初雪です。情緒を感じますが、東北の被災地や豪雪地帯を想うと心が痛みます。
2011/09/02
耳慣れない名前の人が新閣僚に。大丈夫なのかなー?
2011/09/05
「税と社会保障の一体改革」は、増税と社会保障の切り下げ政策だ。
2011/09/07
台風12号の犠牲者、100人を超えた。水の被害、地すべり対策の見直しが必要。
2011/09/09
奈良・和歌山の2つの天然ダム湖で、大雨の場合決壊の恐れがあるという。叡智を総動員して食い止めてほしい。
2011/09/12
名前忘れたけど、就任9日間で経産相辞任。これが民主党の「程度」。ひどいね。
2011/09/13
失言騒動は大臣になると「何でもできる」の錯覚が原因では? これはもう幼児思考。
2011/09/14
新首相演説の「正心誠意」は、国民に向けたメッセージとは聞き取れず。じゃ、誰に?
2011/09/16
国連、原発事故の「想定低すぎる」と報告書で指摘。この問題いよいよ国際舞台に俎上。
2011/09/20
さすが、原発推進の日経新聞。昨日の脱原発集会の記事、一行もなし。
2011/09/22
野田首相、停止中の原発再稼動を示唆。「正心誠意」はやはり財界向けだった。
2011/09/26
昨日、横須賀で「脱原発・原子力空母は帰れ」集会に4500人。全国に「原発いらない」の行動が広がっている。
2011/09/27
法人税減税、10年間で12兆円(25日付、しんぶん「赤旗」)。やめれば庶民増税は不要。
2011/09/28
被災3県で、地域を特定したものの雇用保険の90日の支給再延長。当然の措置だ。
2011/09/30
沖縄密約事件の高裁判決、資料の「廃棄の可能性」を示唆。逆転判決もひどいけど、国もひどい。
★脈絡のないきょうの一行
野党7党が「新党きづな」を野党と認めず。仕方ないか。「きづな」は野党というより野合だからなー。
展示してある半数近くが震災関係ですが、これはやむを得ないことでしょう。そのなかで二つ、気になるものがありました。一つは、母を津波で亡くした女の子が、覚えたての字で「いきているといいね おげんきで」と紙に書きながら寝入っている様子を撮ったもの。その姿の愛らしさと、その子の思いに涙を誘われました。
もう一つは、東電福島第一原発の事故直後の写真。最近はテレビもそのときの様子を流さなくなりましたが、凄まじい、の一言です。空からですがその写真を一見しただけで、未だに収束していない理由がわかります。写真が伝える現実の重みが、しっかり伝わってきます。
写真は目を通して、現実や真実を見せてくれます。その役割を新聞は果たしているにもかかわらず、消費税問題になったとたんにトーンは国民の目を塞いでしまっています。小選挙区制をメディアが一斉に推進する報道をしたとき、当時マスコミ学で教鞭をとっていた創価大学の新井直之教授(故人)は、「総マスコミ状況」という表現をしました。まさにいま、消費税問題をめぐってそういう〝状況〟になっていると言えます。
報道写真展の会場から1フロアー上には、新聞の歴史が展示してあります。全国の地方紙を含む新聞の現物もあります。明治以降のものが主ですが、第1回全国新聞週間(1948年10月1日から)の標語が目につきました。
*日米共用標語/あらゆる自由は知る権利から
*日本の代表標語/あなたは自由を守れ、新聞はあなたを守る
日米共用標語があったことは面白いのですが、これらの標語は「自由」を渇望していた戦後のこの時代を象徴しています。ところが、2年後の6月に共産党の機関紙「アカハタ」(当時の題字)が無期限停刊を受けるという弾圧行われています。歴史は歴史として、いま新聞は、メディアは、ジャーナリズムは、あなた=国民を守っているでしょうか。
ジャーナリズムとは「反権力」「反戦・平和」「民主主義・人権擁護」を貫くことに神髄があると私は考えます。メディアが〝第四権力〟とならないように、しっかり監視する必要がありそうです。それにつけても、メディアは『憂』の一つです。
★脈絡のないきょうの一行
最高裁、「君が代訴訟」で裁量権の逸脱だとして処分を取り消す判決。少し、風が通った。
赤旗は「大手紙社説この異常」、「消費増税先にありき」、「国民無視し政権後押し」の大きな見出しを立てて、1面に特集しました。内容は朝日、毎日、読売、日経、産経の大手新聞社の14日の社説が、消費税増税支援を一斉に主張したことを取り上げたものです。
同じような報道が過去にもあったことを覚えておいででしょうか。一つは、1987年の国鉄の分割・民営化のとき。そしてもう一つは1994年の衆議院に小選挙区制を導入したときの2度です。国鉄の分割・民営化のときはまず国労バッシングから始まりました。先日も若干触れましたが、「カラスの泣かない日はあっても、国鉄職員(国労組合員)のヤミ・ポカ報道のない日はない」と言われるほど、執拗な国労攻撃が行われました。
たとえば、仕事が終わり汚れた身体をきれいにするために風呂に入ると、「勤務中の入浴」と言って報道されるなどひどいものでした。仕事が終わって(時間内に)風呂に入ることは、労使間で取り決めたことの一つでした。しかしメディアはそれを飛び越え、「勤務時間中の入浴はけしからん」と批判したのです。
何故、国労攻撃だったのか。分割・民営化に一番反対したのは国労だったからです。当局にとって、国労はいわば〝目の上のたんこぶ〟だったのです。その攻撃にメディアが手を貸した、すなわち国鉄の分割・民営化を推進したのです。
小選挙区制もそうでした。ところがこの制度を導入するまえ、同じことを画策した鳩山一郎内閣のハトマンダー(1956年)、田中角栄内閣のカクマンダー(1973年)のとき、メディアは民主主義に反するもの、として一斉に反対し日の目は見ませんでした。しかし、1994年のときは「第8次選挙制度審議会」委員に大手新聞各社の代表をはじめ、放送局などメディア関係者が大量に就任したうえ、その委員長に読売新聞社の社長が座ったのです。
審議委員にメディア関係者を採用したことは、視点を変えれば、小選挙区制に反対するメディアを封じ込めるためのものだったといえます。しかも、選挙制度を変えるための審議会にもかかわらず、「政治改革」という名称をつけて国民の目を逸らすことを行ったのでした。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
増税推進報道のなかでも、世論調査の過半数は「消費税増税ノー」。どうするメディア。
なぜ、こういうことがまかり通るのでしょうか。原因ははっきりしています。労働組合(連合)が賃下げを認めたからです。この20年余、欧米諸国の労働者の総人件費は上昇していますが、先進国のなかで日本だけは下がり続けています。これも労働組合がまともにたたかってこなかった結果です。
労働者の賃金を引き下げながら、大企業を中心に内部留保金は266兆円(2010年度・約5000社)に膨れ上がっています。これも労働組合が許したからにほかなりません。いやむしろ、誤解を恐れずに申し上げれば、労働組合の〝手厚い庇護〟のもとで、この内部留保は作られていったのです。もちろん、全労連を中心にした国民春闘共闘は、ストライキを含むたたかいを構築してきましたが、数で勝る連合の賃上げ相場に引きずられた結果が現状なのです。
たたかわない連合に引きずられる一方で、「公務員の賃金は高すぎる」という攻撃があります。なんとテレビ朝日はパート労働者(年収200万円以下のワーキングプアー)も含めた民間の平均賃金を算出して比較、「公務員は高い」とアピールしています。このやり方は、かつて国鉄の分割・民営化のとき「カラスの泣かない日はあっても、国鉄労働者のヤミ・ポカ報道のない日はない」といわれるほど、メディアのひどい偏向報道がありましたが、全く同じといえます。
少し横道にそれましたが、国家公務員の賃金を引き下げたらどうなるか。消費税増税と同じように、間違いなく消費が冷え込みます。国家公務員は現在56万1000人となっています。50万を超える人たちが賃下げをされると影響は小さくありません。そのうえ、地方公務員にまでこれが広がったら大変なことになります。ちなみに、地方公務員は現在235万1000人となっています。
1割近い賃下げは、説明不要なほど家計を圧迫します。住宅ローンを組んでいる家庭の負担は計り知れませんし、当然、買い控えが生じます。日本の経済に影響が出ないわけがありません。
同時に、この賃金引き下げは震災復興の財源づくりを名目にしていますが、発想が転倒しています。あの被災地で、国家公務員が復旧・復興のためにどれだけ苦戦しているかあの人たちは知っているのでしょうか。公務員の賃下げは、復興へのモチベーションをも切り下げることになるのを知るべきです。公務員の賃下げもまた、『憂』です。
★脈絡のないきょうの一行
宮城県南三陸町に、高台の土地106ヘクタールを元楽天副社長が寄付。すごい。超〝伊達直人〟版だ。
「海外、少なくとも県外」という方針は民主党の公約だったはずです。一時期、徳之島案が浮上するなど混乱しましたが、アメリカからの圧力と、それを後押しする政界・財界によって「海外、少なくとも県外」は死語化され、現在にいたっています。この約束が反故になったため鳩山内閣が退陣せざるをえなくなったのは、記憶に新しいところです。
いや、モノの考え方としては逆だったのかもしれません。つまり、普天間基地の代替地は沖縄でなくてはならなかった。だから内閣総理大臣のクビを代えてでも、強行しなければならなかった理由があったのではないでしょうか。つい最近、それを証明するかのような出来事がありました。
先週のことです。6日の沖縄タイムスを紹介しましょう。「オバマ米大統領は5日午前(日本時間6日未明)、国防総省でパネッタ国防長官ら米軍幹部とともに国防戦略見直しの結果を発表した。オバマ大統領がアジア太平洋を『最優先』とする戦略を打ち出したことも踏まえ、同地域を重視。南シナ海を中国の勢力圏にさせないための戦力を維持する一方、中東と朝鮮半島での二つの大規模紛争に同時に対処、勝利する『二正面作戦』への態勢は継続しない。国防費の大幅削減を受け、陸軍と海兵隊の兵力をさらに削減する。」――としています。
これは全国紙でも報道していますが、発表のなかにもう一つ重要な問題がありました。「中国の台頭への脅威」が入っていたことです。アメリカは明らかに軍事面で中国を意識しているのです。だとしたら普天間の代替地は、中国から至近距離にある沖縄でなければならないのは絶対条件となります。
アメリカが考える中国の脅威に対抗するために、〝何が何でも辺野古〟をゴリ押しする日本政府の意図がある、と断じていいのではないでしょうか。同時にアメリカは国防費を削減し、南シナ海全域の〝防衛〟を日本に肩代わりさせる、そういう図式も見えてきます。
もう一つ注目したい米軍の動きがあります。そのことを日経新聞が昨年の12月4日付で詳しく報道していますが、米軍はアフガン、イラクから撤収したあと、世界のエネルギー資源の半数近くが通過するインド洋、マラッカ海峡、南シナ海周辺に再配置するというのです。それゆえに、アメリカがインドとミャンマーに接近していることは知られているとおりです。
その米軍の新しい戦略に、「辺野古」が組み込まれようとしているのです。これは軍事面からの『憂』です。
★脈絡のないきょうの一行
小沢一郎さん、陸山会事件の本人尋問で土地購入のカネの出所について新たな証言。2転、3転、いや、6転だ。これって何?
現在、コメは770%の関税がかけられ日本のコメ作農家を守っています。これがゼロになったら、結果ははっきりしています。コメだけでなく果物や野菜など農産物全体も打撃を受けることになります。酪農も例外ではありません。当然、食の安全問題も生じます。つまり日本の農業全体が衰退し、食の安全が脅かされることになるのです。だから、JA・全中はTPP反対に全力をあげてたたかっているのです。
この問題、視点を変えてみると防災問題とも深いかかわりがあります。田んぼや畑の存在によって、降った雨は土中に浸み込み防災の役割を果たしています。ところがコメづくりがストップし、田んぼがなくなったらどうなるか。
降った雨は、全てが川に流れ込み濁流となって下流のまちを襲います。最近のタイ水害の原因は、田んぼや樹林帯を工場団地にしたためだといわれています。そういえば、八ッ場ダムの建設再開を行うとしていますが、よもやこのことを想定した上のことではないでしょうね。
あまり問題になっていませんが、雇用問題も心配です。TPPはモノだけでなく、ヒトをも〝自由化〟します。海外の安い賃金労働者が入ってくる可能性があるのです。派遣法が改悪されようとしていますが、この問題を先取りしているゆえではないのか、と、私は疑ってみています。
医療についても多くの関係者が問題を指摘しています。混合診療の導入と皆保険が崩れるのではないかというのが、その中心です。TPPは日本国民の健康をも損なうことになりかねません。
最後に指摘しておきたいのは、輸出企業にとっても打撃を蒙る恐れがあることです。自動車を例にとれば、関税がゼロになったら、安くていいものが入ってくる可能性があります。もし国民がそちらに目を奪われたら、国産自動車が売れなくなります。それが何を意味するか、説明の必要はないでしょう。
TPP参加は、やはり「開国」ではなく「壊国」であり、亡国を招くものでしかない『憂』の一つです。
★脈絡のないきょうの一行
いよいよ10、11日に小沢一郎被告の本人尋問。陸山会事件の真相に迫ってほしい。
昨年のこの時期の総理大臣は菅直人さんでしたが、いまは野田佳彦さんです。菅さんの前の2010年1月時点は鳩山由紀夫さんでしたから、ここ3年の正月は毎年、違う人が総理大臣として登場しています。不思議な国ですが、来年の今頃は誰でしょうか、楽しみです。
という冗談はさておいて、昨年来急浮上したこのTPP参加問題は野田さんが総理大臣になって(11年9月2日)以降、にわかに動きはじめました。その動きは、「あわただしく」という形容がぴったりでした。おそらく、民主党党首選挙で海江田さんが勝っていたとしても同じ動きをしたでしょう。
なぜならアメリカの大統領選挙が今年の11月に控えており、逆算すると昨11年の秋口から動かなければTPPへの参加が間に合わなかったからです。「えっ、なぜ米・大統領選挙?」と驚かれるかもしれませんが、アメリカにひたすら追随する日本の政府は、オバマさんには大統領をつづけてもらいたいと願っており、その点数稼ぎの意味があるのです。わかりやすく言えば、大統領選挙のバック・アップであり、オバマはそれを利用して選挙を優位に進めようという狙いがあるのです。
現に、すでに紹介しましたが昨年11月の「千代田総行動」で経産省のこの問題の担当者に「いつまでに(TPP参加の)結論を出すつもりか」と質問したとき、ずばり「11月にアメリカの大統領選挙があるから、8月までに出すことになろう」と答えました。ここまで言っていいのか、心配になりました。では、なぜアメリカを意識しているのか、という問題が残ります。これは時間と紙数を要しますので、後に譲りたいと思います。
目を転じれば、財界からも「TPPに参加せよ」という大合唱が強まっています。この大合唱、消費税増税と深く結びついている、と私は見ます。「あんたそりゃ、深読みし過ぎだよ」と言われるかもしれませんが、ご一緒に考えてみてください。
消費税増税が強行されると、国民の購買力が落ちてモノが売れなくなることは前回説明したとおりです。財界もそのことを知っているはずです。そこで、売れ残ったモノを国内に留めておくことはできませんので、海外に向けて売りに出る必要があります。そのときに邪魔なのが関税です。TPPはその関税を撤廃する訳ですから、財界が〝喉から手が出る〟ほどの大声を上げる理由がそこにあります。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
アメリカ、新国防戦略で「中国の台頭は脅威」と発表(日経新聞)。きな臭さ強まりそう。
とりわけ日本は世界経済発展の牽引車的役割を果たしており、その影響は計り知れません。現在の円高傾向は遅からず崩壊する、と、少なくないアナリストが指摘していますがそのスピードにも拍車がかかることになるでしょう。経済問題の素人である私にさえ分かるこの論理を無視して、増税を何故進めようとするのでしょうか。
消費税増税の理由に、あの人たちは「財政立て直し」「震災復興」を挙げます。たしかに財政立て直しは必要です。その建て直しを行うにあたって大事なことは、財政危機の原因がどこにあったのかということを明らかにすることです。ところが、何一つ議論(国民の前に明らかに)されていません。問題点の解明のない解決策(増税)は、砂上の楼閣にすぎません。
震災復興にしてもしかりです。被災者に増税を押し付けてどうしようというのでしょうか。消費税増税はけが人や病人に、もっと働けとムチを打つようなものです。これはひどい。自民党が政権を取っていた時代にすらなかったことです。だから、保守本流の小沢一郎さんは「反対」を唱えているのかもしれませんが。
では、財政立て直しはどうすればいいのでしょうか。紙数がありませんので、一つだけ紹介しましょう。お金のあるところ(人)から、応分の負担をしてもらうという方法です。日本では大企業を中心とした企業(約5000社)には、内部留保金が約266兆円(2010年度)あります。よくぞ溜め込んだものです。それは、非正規雇用拡大による人件費削減や、度重なる法人税の優遇税制などによって得たものです。
これらは見方を変えると、もともとは国民の懐から出たものです。それらを吐き出していただくことは、何の矛盾もありません。吐き出し方も簡単です。労働者の賃金の押し上げとして活用してもらうのです。賃金が上がれば所得税は増え、消費税増税は必要なくなります。
もちろん、不要不急の出費(歳出)も抑える必要があります。最近、またしても屋上屋ともいうべき八ツ場ダム建設再開が浮上しました。これは無駄遣いのゾンビみたいなもので、度し難い決定です。この国の為政者は、真剣に財政再建を考えているのかを疑いたくなります。
消費税増税は、国民を負のスパイラルに巻き込んで行く――「憂」の一つです。それをメディアが後押ししている姿もまた、異様ですが、この問題は別に譲りたいと思います。
★脈絡のないきょうの一行
広島の原爆碑にペンキスプレー。これは単なるいたずらではなく、平和への暴力だ。
年末行事の一つ、「今年の文字」を逆バージョンで年頭に考えてみました。「興」「希」「前」「笑」「喜」などが浮かんでは消え、悩みましたが、結局は最初に考えた『憂』(ゆう、うれい)にしました。
消費税増税、TPP参加、普天間基地移転、派遣法改悪、国会議員の定数削減、改憲、年金減額、公務員の賃下げ――それらに加えて、原発事故の収拾、そして大震災からの復興という課題。憂いだらけです。
増税などの動きを敢えて「攻撃」と言わせていただきます。当然、攻撃というからにはする側と、される側があります。される側、即ち、国民の目線からこの問題を考えてみます。する側は、当然、政府であり政権政党であり、マルクス的にいう独占資本です。
今回のこの攻撃、ハンパではありません。とにかくやみ雲的、大震災を利用した便乗的、そして断末魔的攻撃といえそうです。つまり裏を返せば、そうせざるを得ない状況にあの人たち、つまり攻撃をする側が追い込まれていることの証左でもあります。全ての問題を解析するには紙数がかかりすぎますので、いくつかを取り上げてみることにします。
まず、消費税問題。姑息ですねー、民主党は。党内の反対意見を押さえつけるために、実施予定を半年遅らせました。まるで朝三暮四ですね。消費税増税に反対していた議員は、結果的には同じなのに、えさの数を朝と夕方を変えて納得させられた、サルかと思ってしまいました(笑)。
※朝三暮四/中国、宋の狙公(そこう)が、飼っている猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという「荘子」斉物論などに見える故事から(大辞泉)。
消費税は、「逆累進課税」といわれます。一律に税金がかかるため、低所得者ほど負担が重くなるからです。年収200万円以下のワーキングプアといわれる人が1000万人を超え、生活保護受給者が205万人を超える日本の現実を見たとき、消費税増税は国民に「死ね」というに等しいといわざるをえません。
そして真に恐ろしいのは、国民負担増のみならず経済に大きな打撃を与えることです。増税になれば国民は買い控えをします。つまり購買力が低下するのです。購買力が低下するということはモノが売れなくなるということです。モノが売れなくなるということは、カネの回りが悪くなる、すなわち不況に陥るということです。「内需拡大」が大泣きします。
事はそれだけで終わりません。モノが売れなくなるとモノをつくらなくなります。モノを作らなくなるということは、つまり、失業者が増大するということです。失業者の増大は、さらなる購買力低下を招き「負のスパイラル」を引き起こします。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
全力疾走の東洋大学、箱根駅伝新記録で優勝。すごい。暗い世相の明るい話題。