◇=◇=◇=◇
見出し/八ッ場ダムは由緒ある温泉街をズタズタにしてきました。ダムのために苦痛の日々を送り、疲弊してきた50年の歴史。
八ッ場ダムの話しが浮上してきたのが1952年、その後、吾妻川の酸性問題で一時立ち消えになりましたが、東京オリンピックがあった64年に中和工事が完成し、ダム問題が再燃しました。地元の人々は長い間、ダム反対の姿勢を堅持しました。しかし、それは精神的にも肉体的にも大変な苦痛を伴うものでした。ダム起業者の手段を選ばぬ切り崩しに対抗するため、対策会議と抗議行動に追われる日々が続きました。何をするにもダム問題が関係し、片時もダムのことが頭から離れることのない日を送ることを余儀なくされました。やがて、疲弊した人々はダム建設を容認せざるをえなくなりました。
◇=◇=◇=◇
決して気負いのない淡々とした文章ですが、当事者のみなさんの気持ちが表れていると思います。自分の生まれ育った場所を守ろう、ふるさとを守りたい、ここに住みつづけたい、景勝地を残したい、という思いは半世紀の長いたたかいで、間違いなく疲弊したのです。その気持ちを私たちは理解しなければならないと思います。
苦渋の決断によってダム建設を容認した。しかし、鳩山内閣になってそれが中止になるという憤りは理解できます。「今さら中止はないだろう」という心情は痛いほど分かります。この思いを、国、とりわけ前原国交相は真摯に受け止めるべきです。こういう事態をつくったのは自民党政権だ、と言ったところで解決する問題でないことははっきりしています。住民のみなさんとの血の通った対話こそが求められています。
その上で生活再建問題にも手をつけながら、解決の道筋をつくってほしいものです。決して、「強引にダム建設を進めたのだから、強引に中止してもいい」ということになってはなりません。それでは自民党政権と同じです。今まさに「住民が主人公」の温かい政治が八ッ場に求められています。政治とは「①まつりごと。②人間集団における秩序の形成と解体をめぐって、人が他者に対して、また他者と共に行う営み。権力・政策・支配・自治にかかわる現象。主として国家の統治作用を指すが、それ以外の社会集団および集団間にもこの概念は適用できる。」(広辞苑)ものなのですから。
★脈絡のないきょうの一行
90兆円を超える過去最大の概算予算。財源論争に引火だ。
◇=◇=◇
八ッ場ダム建設をめぐっていくつかの誤った情報があります。検証してみましょう。
一つは「中止したほうが高くつく」という誤りです。同ダム事業費は4600億円(残りは1390億円)としますが継続すれば増額が予想されます。
遅れている代替地や付け替え国道など関連事業の進行状況を考えれば、予算の追加は必至です。さらにこれから行う地滑り対策と東電への減電補償をあわせると、さらに1000億円ぐらいの増加が見込まれます。これに残った事業費1390億円を足すと2390億円が必要です。
一方中止した場合、国交省が示す生活関連の1390億円の残事業費のうち770億円です。これを比較した議論をすべきです。
(略)
次は「大渇水が来た時に八ッ場ダムがなかったらどうするのか」という話です。
大渇水が来るかは分かりません。しかし渇水の恐れがある夏場に果す役割が、同ダムは非常に小さいのです。同ダムは夏場になると洪水に備えて、28メートル水位を下げます。そのため貯水量は2500万立方メートルしかありません。
一方、利根川にある11基のダムの貯水量は4億5000万立法メートルです。八ッ場ダムが出来てもたった5%増えるだけ。同ダムの過大評価といえます
(略)
◇=◇=◇
嶋津さんのこの発言、説得力があると思います。建設費については、工事の進捗状況との関係でみればもっとかかるであろうことが予想されますが、この問題を除外してもさらに2390億円が必要だといいます。これはもう無駄遣いです。膨らむ建設費用と〝必要性〟だけをとってみても、八ッ場ダムは中止すべき対象です。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
自衛隊のインド洋での給油活動、期限切れを待つ前に撤収あってもいいのでは。
このダム建設の目的は、もともとは「治水」でした。この項の最初に述べましたように、カスリーン台風被害が建設への引き金になっています。その後、首都圏で水が不足する事態も生まれ、「利水」も目的のなかに入りました。従って治水と利水がこのダム建設の大きな目標となったのです。
ということは、治水と利水の両方とも必要なくなれば八ッ場ダムは不要ということになります。実はそうなのです。治水も利水も下流部では必要なくなっているのです。まず、治水で見てみますと、カスリーン台風以降この計画が出された50年余の間に、利根川の堤防強化工事はすすめられました。その結果、少々の大型台風や大雨にも対応できるほどになっているのです。しかも最近の護岸強化技術は進んでおり、専門家も太鼓判を押すほどです。
利水はどうでしょうか。この間、利根川水系をはじめそのほかのところに小規模ダム建設がすすみ解決されてきました。しかも一番深刻だと言われた東京都は、地下水の利用によって大幅に緩和されました。しかも、人口減(少子化)傾向もあり、水の量そのものも少なくて済むようになっているのです。
つまり、客観的データは「八ッ場ダム不要」を無言のうちに語っているのです。その現実を無視して、推進派は遮二無二なってダム建設へと走っているのです。ダム建設の理由となった治水も利水も事実上不要になったにもかかわらず、「すでにお金を投入し工事もすすんでおり、移転した人も多数いるから」というふうに論旨が変わってきているのです。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
鳩山内閣の外交、日・中・韓、アフガン、パキスタンとやりますねー。対話外交はOKだ。
①付替え国道は工事進捗率と事業費執行率から見て、事業費がかなり不足
平成20年度末までの付替国道の事業費執行率はすでに89%に達しているが、完成区間は6%にすぎず、残り11%の事業費で完成させるのは至難のことである。さらに、付替国道は4車線の計画であるのに、2車線の工事しか行われておらず、4車線にするためにはかなりの追加工事費が必要となる。
②東電への減電補償が数百億円になる
八ッ場ダムに吾妻川の水をためるためには、東京電力㈱の水力発電所に現在送られている流量の大半をカットすることが必要である。八ッ場ダムの貯水による影響はダム周辺の発電所から利根川合流点の発電所まで及ぶので、減電補償額は数百億円の規模になると予想される。
③試験湛水後、地すべりが頻発で大滝ダムのように数百億円以上の対策工事が必要
八ッ場ダムの貯水池周辺では22箇所も地すべり危険箇所があるので、ダム本体が完成して試験湛水をはじめれば、大滝ダム以上の規模で貯水池周辺において地すべりが発生し、その対策工事に何百億円という事業費が必要となることが予想される。
ということになります。①は字義通りで残り11%の資金ではとうてい予定どおりにはいきません。②ついていえば全く補償交渉は行われていません。従ってその多寡がどうなるのか不明です。しかも補償期間は一時期なのか、永久なのかも不明です。このダム、東電を儲けさせるためのものでは、と疑念を持ちたくなります。この問題では2週間ほど前しんぶん「赤旗」が問題を指摘していました。③は想像を絶します。ダムは大量の水を蓄えるわけですから、周辺に影響を及ぼすことは当然です。きちんとした対応をしなければ、新たな災害(人災ですが)が発生することも考えられます。(次回につづく)
※お詫びと訂正/この間の記述で「川原湯」が「河原湯」になっていた、というご指摘をいただきました。ご指摘にお礼を申し上げ、訂正させていただきます。
★脈絡のないきょうの一行
生活保護受給者が171万9971人になり、170万人を超えたのは45年ぶりという。うーん。